2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向け、全国の大学・短期大学は連携協定を結び、各大学の特色を生かしたアスリートサポートの取り組みを進めています。本学では、健康栄養専攻の教員を中心に秋田県内のジュニアアスリートに対する食事調査や栄養指導、また、専攻科健康栄養専攻学生による研究活動を通したアスリートへの栄養教育など、秋田県のアスリートの競技力向上を支援する教育活動に力を入れています。
11月25日(土)『秋田県から世界で活躍するトップアスリートを!』の願いを込め、地域に向けた教育事業として、スポーツ栄養学セミナー「成長期の女性スポーツ選手のヘルスサポート」を開催しました。これは、私大・短大パワーアップ支援事業として県の支援を受けたものです。講師に能瀬さやか先生(東京大学医学部附属病院女性診療科・産科、日本体育協会公認スポーツドクター)、小清水孝子先生(大妻女子大学教授、日本体育協会公認スポーツ栄養士)をお迎えし、ご講演いただきました。
参加者は、秋田県内の高校の運動部に所属する現役の選手とその保護者が中心でした。また、本学健康栄養専攻2年生も受講しました。参加者から、「競技をする上で、今後のコンディション管理に役立つ内容だった」、「薬の服用について正しい知識が得られた」、「娘のアスリートとしての現在と引退後のことを考えて、サポートに役立てられる」などの声をいただきました。
講演内容
1.「10代における月経の重要性」 能瀬さやか先生
月経異常を中心とした女性アスリート特有の問題、試合周期に合わせた月経周期の調節法、月経困難症の原因やその対応策についてなど
2.「10代女性スポーツ選手の食生活とスポーツ障害」 小清水孝子先生
成長期のスポーツ選手に適切な食事量、エネルギー摂取量が不足する原因と対策、無月経時の食事の対応、女性スポーツ選手に多い貧血の予防と対策について
デリケートな問題についての質問と能瀬先生のご回答
質問① 過多月経は無理に抑制(治療)する必要はないのか。 ⇒過多月経によって貧血がある選手は、治療を強く勧めます。貧血はないが経血量が多い選手に対して治療を行うかについては、‘選手が困っていたら’治療の対象になると考えています。例えば、試合や遠征中に月経があたってナプキンから漏れないか心配、白いユニフォームに経血が漏れて恥ずかしい経験をしたことがある等、選手が改善したいという意思があれば治療の対象となるため、婦人科での相談をお勧めします。
質問② 月経の回数が多い場合は問題ないのか。治療が必要か。 ⇒月経の回数が多い(頻発月経)も治療の対象となりますが、まずは原因が何かを知ることが重要です。利用可能エネルギー不足で排卵が止まると頻繁に不正出血がみられ、これを月経と数える選手は多いです。頻発月経がある場合は、まずは短期間で体重が減っていないかを確認しましょう。また、排卵の有無を確認するため、基礎体温を2~3か月測定し婦人科を受診するようにしましょう。
質問③ ピルを服用後、月経周期が乱れることはないのか。 ⇒ピルを服用中は、原則月経は止まり、服用を中止すると2~3日後に月経がきます。ただし、服用中に出血がみられることがあり、これは月経ではなく不正出血と呼ばれます。特にピルを飲み始めに不正出血の頻度は多く、この出血を月経と思う選手は珍しくありません。服用を継続しているうちに不正出血の頻度は減ってきて、希望する時期に自由に月経を起こすことができるようになります。
質問④ 無月経の期間が長いと、月経の周期が戻るまで時間がかかるのか。 ⇒普段診察をしていると、数か月無月経の選手と比較すると何年も無月経の選手では月経が回復しにくい傾向にありますが、実際にデータを解析した結果では、無月経期間と月経が再開するまでの期間やホルモン値回復期間には関連はありませんでした。